『食の豆々知識』 Vol.70 照り焼き

明石家さんまが23年ぶりにキッコーマンのCMに戻ってきました。

当時大ヒットした“幸せってなんだっけ♪”の曲の“ぽん酢しょうゆ”を“うまいしょうゆ”に変更し、話題になりました。

当時、よく歌っていた私としては、“あぁ、もう23年も前の話なんだ”とちょっとショックを受けましたが(笑)。

それはさておき、その第2弾、広末涼子と共演では、鶏の照り焼きを作っています。

マクドナルドでは、今年も春になるとやってくる、てりたまバーガーが発売されました。

ということで、今回は、“照り焼き”のお話。

● 照り焼きとは。

もともとは、日本料理の調理法で、しょうゆを基本にしたたれを材料に塗りながら焼き、ツヤよく仕上げたものです。

よく一緒にされるつけ焼きは、たれに漬け込んだ材料を焼く調理法で厳密に言えば違います。

CMでは、たれのしょうゆ、みりん、砂糖の配合が3:2:1となっていますが、つけ焼きのたれよりも照り焼きの方が濃厚です。

また、甘味もみりん、砂糖のほか、水あめ、氷砂糖、はちみつなどを使用したりします。

ぶりやまぐろなどの魚の他に、脂肪分の多い肉類、野菜にもあいます。

本来は、串に材料を刺し、素焼きしてから2~3回に分けてたれをかけ、乾かすように焼きながら仕上げますが、フライパンなどで、からめながら仕上げる方法もあります。

日本料理では、これを区別し、後者を“なべてり”とよんだりもします。

照り焼きといえば、魚の照り焼きが多かったのですが、最近では、鶏の照り焼きや、照り焼きハンバーグなど、お肉の照り焼きが主流になりつつあります。

● TERIYAKIとは。

照り焼きはアメリカでも人気があり、“TERIYAKI”が辞書に載るほど定着しています。

アメリカでテリヤキソースが生まれたきっかけは、キッコーマンが、海外では“その土の食文化にあったしょうゆのレシピを提案し、しょうゆをその土地に定着させる”、という戦略をとったことにあります。

ちなみに、しょうゆは英語で“Soy Sauce”ですが、アメリカでは普通に“KIKKOMAN”とよばれています。

アメリカのTERIYAKIの調理法は、日本と異なり、材料に照りを出す調理法ではありません。

材料をテリヤキソースに漬け込んで調理をしたり、グリルなどで素焼きしたに肉類にテリヤキソースをかけたりして食す方法が一般的です。

テリヤキソースも日本のように調合しタレをつくるというよりは、ほとんど既製品のテリヤキソースを使用します。

そのテリヤキソースは、日本人の感覚からすると、甘すぎたり、にんにくやごま、香辛料が入っていたりすることが多く、「照り焼き」 と「TERIYAKI」は違うものに仕上がっていますが、海外ではその事実は知られておらず、純粋な日本料理だと思われていたりもします。

ところで、キッコーマンによれば、しょうゆそのものの消費量が近年減ってきているとか。

今回、鶏の照り焼きをCMに使用したのは、ぶりの照り焼きよりも、テリヤキバーガーなどのイメージが強い若い世代に、今まで海外戦略としてきたものを日本に起用しているといえるかもしれません。

● テリヤキバーガーとは。

ファストフード業界初の「テリヤキバーガー」は、1973年に、モスバーガーにて誕生しました。

モス開業の翌年のことです。

モスバーガー創業者の櫻田慧氏が、アメリカで照り焼き風のハンバーグを食べたことがヒントになっているというから、テリヤキの逆輸入ともいえそうです。

その後、マクドナルドを始めとする外資系を含めたファストフードチェーンもそれに続き、今ではどこでも見られるごく一般的なメニューとなりました。

また、日本以外で、販売されていることも多いようです。

ちなみに、タイでは、テリヤキバーガーではなく、サムライバーガーと呼ぶとか。

未だに、日本=サムライ、ゲイシャ、フジヤマ、なんですね(笑)。

ところで、昔、森高千里の歌に「テリヤキバーガー」というのがありました。

森高千里作詞でしたが、歌詞のどこにもテリヤキバーガーは登場せず、当時不思議に思っていた覚えがあります。

今考えれば、ハンバーガー発祥の地アメリカやイギリスでも関係なく、世界中で親しまれるテリヤキバーガーのようになりたいということなんでしょうか。

おもしろいセンスをしているなぁと、今更ながら、感心した今日この頃でした。