KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』  Vol.72

おはようございます。

土日祝日など暦通りに過ごせない仕事が私たちですが、久しぶりにメンバーが揃い、ちょっと一杯ということで渋谷の繁華街に出かけました。

どこに入ろうかと迷っていると、驚きの看板が!

〈大漁刺身盛り980円〉写真が添えられ、実にそそります。

この店の前は何度か通っていましたが、地下への入口が暗く、なんとなく入りにくくて、敬遠していました。その入口がリニューアルして明るく綺麗になっていました。

「おぉ~これは凄い、新規に頑張ろうとしている店は入ってあげなくちゃね」ということで、飲む気満々で入店しました。

早速、ビールとともに刺身盛りを注文、早速ビールが来ましたが、ココからなんだか眉間にしわがよることに。

メニュー表記は生中でしたが、出てきたは小さなグラスに入った生中で、「なんじゃこれ!」と言った量です。

欧米には、お客様に提供する量が厳しく決められている国があり、どこで飲んでも安心して同じ量が飲めるのですが日本には量的規制がありません。

なので、これがウチの生中ですとどんな器でも言えるわけですが、それにしても小さい。

「これはヤバいね、刺し盛りのサービス分を他でやられそうだぞ」。

仕事柄メンバーはメニューを目を皿のようにして確認し始めました。

思った通りでビールの値段は600円、ハイボールもサワーも高い高い。

極め付きは、お通しで、一口サイズに切ったキャベツが4、5枚と大根、ニンジンのスティック4~5本がのった小鉢が1皿だけ出されました。

どう見ても3人分のお通しの量ではなかったのですが、このお通しがなんと560円。

お通しだけで3人で1680円です。

「ダメだ、こりゃ」と早々に退散してカシを変えたのでした。

《いくら儲けたいの、いくら儲けねばならんのと、そんな横着な考えでは人間生きてゆけるものではない》〈豊田佐吉〉

心機一転、お店のファザードを変え、CPの高い新商品を考え、お客様の集客を図るまでは良かったですが、商品価値が値段に及ばないとはっきりわかるもので利益を取るということは、あまりにもお客様を馬鹿にしています。

釣られたお客様もすぐに姑息なマジックに気がつきますからすぐに元の木阿弥ということです。

我々飲食店の価格というものにお客様は敏感です。

敏感とは価値観にという意味で安ければよいというものではありません。

雰囲気やサービス、料理の量・盛り付け、総合的に判断して適正な値段の店を支持するのです。

前出の店はお客様を引き付ける手法は成功したかもしれませんが、リピートしていただくということにつながる策は、利益を考えることで見えなくなってしまったのでしょう。

お客様が足を運び続けるお店を創るのはマジックではなく、「お客様に喜んでいただく」お店の誠実な心の表現をわかっていただくことに他ありません。

今年もあと3カ月、誠実に気合を入れて頑張りましょう!