KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』  Vol.143

9月になっても、暑いですね。

こんなに暑い夏が続くなんて、記憶にないなぁと思っていたら、気象庁の発表で観測が始まって以来125年で一番暑い夏だと。

いやいや勘弁してほしいですよね。

でも、きっと来年は126年で一番暑いとなるのかもしれません。

飲食業界で働く皆様には過酷な夏ですが、どうかお体に気をつけてお過ごしください。

 

さて、今回ですが、事務所の近くのお店で感じたことです。

その店は、次から次に2年も続かず閉店する25坪ほどの物件に1年ほど前オープンしました。

「あら、また新店が出たか、今度はどれだけ持つかなぁ」なんて思って見ていました。

1か月過ぎると、お店は賑わいを見せ始め、外にパラパラとお客様が待つ光景が現れてきました。

「へぇー、今までの店とは様子が違うぞ、アイムドーナツかぁ、ドーナツ屋さんだ。」

3か月経ったころ、行列ができ始めました。

そのうち、メディアが取り上げ、今では、この暑さの中40~50人が並ぶようになりました。

休日などはさらに長蛇の列が…。

衰える気配がありません。

大したものです。

ただ、そうなったのはなぜなのか?ここで書きたいところですが、それは顧問日にお話しするとして、ここでは別の観点から。

事務所に向かう通りに面しているので、行列を横目に店内がよく見えます。

感じたのは働く従業員の多さです。

見えるだけで7~8人ですので、恐らく10人以上はいるのではないでしょうか。

物件周辺には募集のポスターなど見かけたことはありません。

募集誌やネットで集まったものと思われます。

調べたところ、本店は中目黒で、そのストーリーや商品の発祥も発信されており、経営者は「マリトッツォ」の仕掛け人でもあることがわかりました。

つまり、ブランディングを行うことで、人材集めも有利に運べているということですね。

飲食業界の離職率は49.7%で業界別ランキング第1位、人手不足の悲鳴が最も大きい業界からすれば、うらやましい限りですね。

もちろん、業界も指をくわえているだけではなく、最近は、学生たちの半数が奨学金の返済(平均324万円)を抱えて社会に出てくる苦境に目をつけ、肩代わり(各企業が奨学金返済額の一部または全額を支援)する制度を導入する企業も現れてきました。

ただし、それが縛りになることを考えると、ブラック勤務になる危険性もあり、決め手になるとは思えません。

ましてや、個人店や小規模企業ではそのような制度を導入することも負担が大きく現実的ではないでしょう。

やはり、普段からの従業員との接し方、教育のあり方が重要で、経営者の姿勢や従業員への愛情が伝わっているかが、大切なのではないでしょうか。

人手不足の解消は経営者の苦悩ではなく、「店全員の課題」として取り組めたら、局面が変わってくるかもしれません。

現に、顧問店の中で、経営者と社員・P/Aの関係が非常によく、彼らが友人・知人・家族などをリクルートしてきたという例がいくつもあります。

彼らが気遣ってくれるような店づくり、人づくりが最後は救いになるのかもしれません。

ホント、大変ですが頑張りましょう。

お客様の笑顔を創りましょう。

では、また。