『食の豆々知識』 Vol.224 八丁味噌

うちの教室は、今、味噌づくりシーズンをむかえ、毎日いろいろな味噌を仕込んでいるのですが。

NHKの大河ドラマ、ご覧になっていますか?

いつもは見ないんですが、今年は松潤(松本潤)が出ているので、娘と見ています笑。

先日のドラマの中で、徳川家康(松潤)にふるまわれた料理が、芋の煮っころがしも、お味噌汁もみんな真っ黒で。

娘に、「ほら、愛知だから、豆味噌なんだよ。

色が黒いでしょ」と言ったら、そんなところ見ている人いないよ、と笑われました...。

でも、信長も家康も岡崎出身(愛知)で、八丁味噌を好んでいたと言われています。

家康は、江戸に移ってからも、八丁味噌を取り寄せていたという話も。

今日は、そんな八丁味噌の話。

 

● 豆味噌って大豆の味噌のこと?

味噌は、豆類と麹と塩を発酵させてできた発酵食品のことで、一般に、麹の種類で分けて呼びます。

例えば「大豆」と「米麹」と「塩」でつくると「米味噌」。

これが、日本全国の味噌の7~8割を占めています。

この麹が「麦麹」になると、「麦味噌」に。

九州地方でよく見かける味噌ですね。

そして「大豆」と「麹」と「塩」だけで作った味噌が、「豆味噌」です。

豆味噌は、大豆を蒸して、つぶして、味噌玉(だんご)にし、それに麹菌をつけて発酵させ豆玉麹を作り、塩と混ぜて発酵させます。

つまり、米麹や、麦麹などの穀物が入らない、豆だけの味噌です。

ただ、ネットのサイトや、ところによっては、大豆をつかった味噌のことを「豆味噌」と呼んでいることもあり、ややこしくなることもあります。

法律などで決まっていることではないので、どちらも間違えではないのですが...。

 

● 豆味噌と八丁味噌は同じ?

愛知、三重、岐阜の3県は、豆味噌文化圏といわれています。

その中でも、愛知の岡崎が、八丁味噌の発祥の地であり、岡崎から八丁(約870m)離れた八丁村(現在の八帖)でつくられたから、八丁味噌と呼ばれるようになったと言われています。

八丁村には、江戸時代から続く2つの蔵元があり、木桶を使用し手間と時間をかけ、今でも伝統製法を受け継ぎ作っています。

ここで難しいのが、2017年、国は、製法、原料、熟成など、細かく定めた基準を満たした愛知県生産の豆味噌を八丁味噌と呼ぶことが出来ると決めました。

岡崎だけでなく、愛知であれば、八丁味噌と呼べる、そして実は、この基準は昔ながらの2つの老舗の伝統製法とは異なるものでした。

ですから、「愛知でつくる豆味噌は八丁味噌」と言えますが。

昔ながらの八丁味噌を知る方は、これは八丁味噌ではない、という意見もあり、まだまだ、解決はしていないようです。

 

● 赤味噌と八丁味噌は同じ?

さて、次に赤味噌とは。

これは、色が濃い味噌のこと。

色が濃いのは、カラメル色素などで色を付けている味噌は横に置いておいて、味噌の成分が褐色化(メイラード反応)したもので、熟成が長いと色は濃くなっていきます。

豆味噌は一般的に、熟成期間が長いのと、アミノ酸が多いため、色が濃くなります。

そのため、愛知などでは、豆味噌のことを赤味噌と呼んだりしています。

しかし、日本の7~8割は、米味噌文化圏。

赤味噌、といえば、米味噌の熟成したものを赤味噌と呼ぶことが多いようです。

 

● 赤味噌と赤だし用味噌は同じ?

これもややこしく、よく間違えられることですが。

赤だし用味噌、これは、だしが入っている赤味噌のことではありません。

お寿司屋さんや日本料理の最後に小さなお椀ででてくる赤だし。

豆味噌は、豆だけでつくられているため、とてもコクのある、ちょっと癖もある味噌です。

これだけのお味噌汁は、本当に豆味噌が好きな方でないとちょっと癖が強すぎるお味噌汁になります。

しかし、旨味がつよいお味噌でもあるので、癖のない米味噌と合わせ、食事の最後に〆として出すことが多いのです。

赤だし用味噌は、だしが入っているかどうかではなく、豆味噌と米味噌を合わせたものなんです。

 

味噌にははっきりとした定義(こういう味噌を何味噌というなど)がないため、「色が赤いから、赤味噌って書いておこう」とか「麹というと健康そうだから、麹味噌にしよう」など、メーカーさんが勝手に決めていい訳で。

更に、それぞれの土地で、それぞれの味噌やその呼び方があり。

本当にややこしくなっています...。

でも今は、味噌ブーム。

さまざまな味噌がスーパーに並んでいます。

いつもと違う味噌もたまには試して、楽しんでみてください。

今日はちょっと長くなりました~。