石田義昭の【飲食店 繁盛ダネ!】その232
「あ~ぁ、コロナ前は当たり前だった海外旅行も、いまや遠き夢となりつつあるなぁ。」
「そうね、飛行機は高いし、ホテルは高いし、円安が悪いのかしら?」
「それだけじゃないよ、日本の賃金は安いし、他にも・・・」
「あなたの稼ぎが少ないから行けないのね。
じゃあ、もっと働いてもらわないと。」
「君もいろいろ協力してくれないとだめでしょ。
ほら、節約とか質素にとかさ。」
「もう、充分やっている。
これ以上はムリ!
あとはあなたの問題ね。」
「コイツ・・・」
「ん?」
ノー天気な奥神様が相手では、ほっとくしかありません。
ですが、我々飲食業界のお店はそういうわけにはいきません。
知らないうちに業界では困ったことが・・・。
【飲食業界で起きている由々しき状況を知っておこう】
観光地や都心では、インバウンドらの姿も目立ち、繁華街はすっかりにぎわいを取り戻しています。
なんだか景気がよさそうです。
ですが、人出が戻っているだけのことで、私には幻にしか見えません。
それが証拠にいくつもの眉を顰めるニュースが散見されています。
「ラーメン業界の閉店が30年で最も多い年に!」
「焼肉屋の閉店がコロナ前も含め過去10年で最多!」
「居酒屋の倒産が急増!」
などなど、確かに街を歩いていると、閉店している店をぽつぽつ見かけます。
そして、その物件がそのままで、次の店がなかなか入りません。
以前は2か月もすると、次の店の工事が始まっていましたが、今は出店を考える方も躊躇しているのでしょう。
外部環境が悪いということがわかっているからでしょうね。
ここにきて倒産件数が急増している理由は何か。
焼き肉店を例に挙げながら、他の業種も考えてみましょう。
一つ目は《競合店の増加》がありますね。
コロナ禍、飲食の他業態と比較して焼肉業態は比較的堅調に推移したことから、大手のワタミ・幸楽苑を含め、急激に新規の店舗数が増えた影響はかなりあったはずです。
ましてや人気の高い業種業態で、ファミレス化・居酒屋化していますから、他の業種にも影響を与えています。
二つ目はウクライナ、ロシアの戦争による輸入の餌代が高騰し牛肉が高騰したため、仕入れが抑えられないという収益悪化の問題があります。
これも他の業種にも同様に起こっています。
加えて円安による輸入食材は高騰が半端ではありません。
三つめはデフレに慣れた消費者のことを考えて値上げができず、収益が悪化したまま営業を続けたことです。
値上げの方法はいくつも手法があるはずなのに、客離れが怖くて上げられない、手法がわからないなど、価格転嫁できず、息切れ倒産となる状況が続いています。
他の業種でつぶれた店にも言えることです。
四つ目は政府の最低賃金値上げ政策と人手不足による人件費の高騰があげられます。
これも他の業種でも言えますが、効率化に取り組んでDX化やオペレーションの改善など生産性向上に取り組まなかったことが原因になっているのでしょう。
五つ目は光熱費の高騰と設備費用が高騰しているためにテコ入れができなかったことですが、他の業種にも直撃している原因です。
ましてや、コロナ流行時に、支援金や金利ゼロの資金を存続のためだけに使って溶かしてきた店は、ここにきてそのツケがどうにもならなくなった結果ではないでしょうか。
このような状況を知っておき、つぶれた店の状況を自店では決して起こさないという備えをしなくてはいけないのが今なのです。
もう一度、経営のことを見直すことも大切ですね。
不安や懸念はいくつもありますが、明るい未来をイメージして、今を過ごしましょう。
ではまた。