コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2025年10月7日

Vol.168 “言葉の重みと配慮のひと手間”を大切に

こんにちは!10月になりました。

朝夕の風に少し冷たさが混じり、焼肉の煙もどこか恋しくなる季節です。

現場の皆様は秋メニューの仕込みに追われている頃でしょうか。


さて今回は、部下と一緒に入った老舗焼肉チェーンでの出来事をお話しします。


入店後、まずはいつものビールで乾杯。タブレットで肉と料理を一通り注文し、カスターセットからタレやニンニクを小皿に準備します。

ここで私の口癖、「おっと、コチュジャンを入れないとコクが出ないからな」と、チューブに手を伸ばしました。


ところが、その瞬間に嫌な予感。軽い…、まぁ残り少ないくらいは仕方ない。

ところが押しても押しても出てこない。まさかの完全空っぽです。


私たちが入店したのは、ピーク後どころか、ほぼ一番客。

テーブルセッティングは整っていて当然のはず。

にもかかわらず、コチュジャンは空っぽ。

思わず「え、どういうチェック体制なんだよ?」と、部下と顔を見合わせました。


早速、呼び鈴を押し、やって来た若いスタッフに「これ、空っぽだよ」と差し出しました。

すると彼は表情ひとつ変えず「あ、はい」とだけ言って持ち去り、すぐに戻ってきて「はい、どうぞ」と新しいチューブを置き、そそくさと去っていきました。


その一連のやり取りに、思わず「一言ないんかい!」と心の中でツッコミ。


せめて「失礼しました」とか「すぐにお持ちします」とか、何かしら言葉を添えてくれれば気持ちも違うのに。

しかし、ずっしりと重みのある新品チューブの感触に、単純な私は「まぁ、いっか」とすぐに機嫌を直してしまったのでした。

ところが、ここからもう一波乱。

キャップを開けて小皿に絞ろうとしたのですが、出てこない。

力を込めても、やっぱり出てこない。

「あれ?まさか…」とキャップを外してみると、案の定、液漏れ防止のシールがピタッと貼られたまま。

新品は新品でも、“完全密封”の新品だったのです。


昔、私がまだ若手だった頃、上司からこう教わりました。

「カスターセットを新しくする時は、お客様に手間をかけさせないようにキャップをひねってシールを外し、固すぎないかも確認してからセットしなさい」と。


なるほどなぁと感心したものですが、今はそんな教育が後回しになっているのでしょうか。

人手不足や人件費高騰の時代、効率を優先するのは理解できますが、こうした“小さな配慮”が抜け落ちるのはやはり残念です。


商品が不足していたことや、シールが剥がれていなかったこと自体は、実は大した問題ではありません。

お客様の印象を左右するのは、最後に添える“ひと言”や“ひと手間”。

そこにこそ老舗の看板を守る力があるはずです。


今回のコチュジャン事件は、笑い話で済みます。

でも、こうした積み重ねが「この店は安心できる」「また来たい」と思わせるかどうかを決めるのです。


さあ今月も、“言葉の重みと配慮のひと手間”を大切にしながら、お客様の笑顔を積み重ねていきましょう!

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