コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2026年3月11日

Vol.173 人材難の時代だからこそ考えたい「人が育つ現場」の創り方

ようやく春の兆しが見え始め、桜の開花が待ち遠しい季節になってきました。

年度替わりを前に、気持ちもどこか新しくなる時期ですね。

先日、顧問店の社長から「新年度のこともあるし、飲みながら話しましょうよ」と声をかけていただき、待ち合わせの居酒屋へ向かいました。

こぢんまりとした店で、迎えてくれたのは学生らしき若いスタッフ。

実に元気よく、気持ちの良い挨拶です。

席に着くと社長から「少し遅れます、先にやっててください」と連絡が入り、私はおしぼりを手に取りました。

ところが不覚にも、それを床に落としてしまったのです。

その瞬間でした。

少し離れた場所にいた若者がすぐに反応し、「今、新しいおしぼりお持ちします。

そのままで!」

そして、あっという間に新しいおしぼりが目の前に。

正直、驚きました。

最近なかなか出合えない“目が行き届く接客”だったからです。

若い頃、先輩に言われた言葉を思い出しました。

まさに、それを体現している一瞬でした。

その後も彼の動きを観察していると、料理説明は簡潔でわかりやすく、動きは機敏。

常にお客様を視界に入れている。いわば“接客の基本”を自然に実践しているのです。

20分ほどして社長が到着しましたが、乾杯より先に話題は彼のこと。

ちょうど店長が通りかかったので社長が声を掛けました。

「彼は正社員ですか?いいスタッフさんですね。」

すると店長はこう答えました。

「いいえ、アルバイトなんです。

簡単なことしか教えていませんが、本当によくやってくれています。

ファンのお客様も多いんですよ。

でも春までなんです。

就職が決まっていまして…。」

二度目の驚きでした。

「そうでしょうね、なかなかいない人材ですよね。」

聞けば、さすがという企業に内定しているとのこと。

さもありなん、です。飲食業界が“人材確保”に苦しんでいるのは周知の事実です。

しかし、今回感じたのは、「資質ある人材は確かにいる」ということ。

そして同時に、「その資質を伸ばせる環境かどうか」が店の力量だということです。

では、現場教育として何が必要なのでしょうか。

まず一つは、“見る基準”を教えることです。

「空いたグラスに気づく目」

「落ちた音に反応する耳」

「お客様の表情の変化に気づく感覚」

これはマニュアルの文字だけでは伝わりません。

ベテランが実際に「今、何に気づいたか」を言語化し、新人に共有することが必要です。

二つ目は、“任せながら見守る配置”です。

彼のような若者は、おそらく放置されたのではなく、「信じて任せられていた」はずです。

しかし同時に、店長や先輩が目を配っていたのではないでしょうか。

完全放任では育ちません。適度な距離感が人を伸ばします。

三つ目は、“良い行動をその場で褒める文化”。

良い接客をした瞬間に「今の良かったぞ」と言えるかどうか。

これが人材定着の鍵です。

それは待遇改善だけでなく、誇りを持てる現場づくりでもあります。

あの若者が春に巣立つのは喜ばしいことです。

しかし同時に、「飲食業界に来てくれたらどれほど頼もしいか」と思わずにはいられませんでした。

今年度も、目配り・気配り・心配りを磨きながら、人が育つ現場をつくっていきましょう。

春は、育成を見直す絶好の季節です。

ホント大変ですが、お客様の笑顔を頑張って創りましょう。

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