コラム

KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』

2026年4月10日

Vol.174 『値上げ』を『満足』に変える『納得感』の作り方

桜が各地で咲き始め、東京では満開の便り。

いよいよ春が来たなあと、どこか気持ちが穏やかになる季節になりましたね。

とはいえ、世界に目を向けると中東での戦争など不安なニュースも多く、先行きが読めない状況が続いています。

とりわけ飲食店にとっては、食材価格の高騰が止まらないことが大きな課題です。

そんな中で、この春は「値上げ」をどう捉え、どう実行するかが重要なテーマになってきていると感じます。

さて今回は、そんな“値上げ戦術”をうまく取り入れているお店に出合ったお話です。

午前の仕事を終え、スタッフと遅めのランチへ。

「とりあえずどこか入ろう」「焼肉なんかいいですね」と、軽いノリで入ったのはチェーンの焼肉店。

いつものように淡々とした迎え入れ。

「タブレットでお願いします」の案内も、もはや日常の風景です。

特に期待もせずメニューを開いたその瞬間、目に飛び込んできたのが――

〈黒毛和牛○○ランチ 数量限定〉

スタッフがすかさず「これ安いんじゃないですか!」と食いつきます。

確かに他のランチメニューより3割ほど高い設定ですが、“黒毛和牛”“数量限定”という言葉の前では、心理的なハードルは一気に下がります。

「よし、これにしよう!」

気がつけば即決。

心の中では「なるほど、スペシャル値上げだな」と理解していました。

既存メニューをそのまま値上げすれば、お客様は敏感に反応します。

しかし、付加価値をつけた新商品として打ち出せば、価格は“納得感”に変わる。

まさに、その戦術にきれいにハマった我々でした。

運ばれてきた商品は、確かに美味しい。

スタッフも「やっぱり和牛は旨いですね」と満足そう。

その表情を見ていると、多少量が少ないことなど気にならなくなります。

いや、正確には気づいてはいるのです。

いわゆる“ステルス値上げ”。

しかし満足感が上回ると、人は不思議と不満を感じません。

むしろ「ちょっと肉、追加するか?」と口にしてしまい、「はい!」という元気な返事に押されて追加注文。

結果、一番“戦術にハマった客”は私だったのかもしれません。

会計を終えて店を出た後も、「美味しかったし、喜んでもらえたし、まあいいか」という納得感が残りました。

ここに、値上げのヒントがあります。

単純な価格アップは“負担”になります。

しかし、価値を伴った価格設定は“満足”に変わる。

例えば今回のように、『限定性(数量限定)』『付加価値(黒毛和牛)』『見せ方(最初に目に入る導線)』これらを組み合わせることで、価格は「上げたもの」ではなく「選ばれたもの」になります。

飲食店経営者の多くが、値上げには慎重です。

「お客様が離れるのではないか」という不安があるからです。

しかし、据え置きの努力だけでは限界があるのも事実。

だからこそ、発想を変えることが必要です。

“どう上げるか”ではなく、“どう納得していただくか”。

今回の体験は、そのヒントを非常にわかりやすく教えてくれました。

この春、価格戦略に悩んでいる方も多いと思います。

ぜひ、頭を柔らかくして「お客様が喜びながら選べる価格」の作り方を考えてみてください。

値上げもまた、立派なサービスの一つなのです。

ホント大変ですが、お客様の笑顔を頑張って創りましょう。

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