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コラム
KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』
2026年8月13日
Vol.178 「なぜ、この店に来るのか」――価格ではなく「来店価値」を磨く

熊本地震により被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
この酷暑の中での避難生活や復旧作業は、私たちの想像をはるかに超えるご苦労があることでしょう。
私自身、寄付という形でしか支援できませんが、一日も早く平穏な日常が戻ることを願うばかりです。
また、大きな災害や異常気象は、消費者の外出意欲にも少なからず影響を与えます。
「今日は外食を控えよう」という空気が広がれば、飲食店にとっても決して小さくない影響が出てきます。だからこそ私は、できるだけ外食をしようと決めています。
仕事の合間のランチも、できるだけ個人店や地域のお店を覗くようにしています。
今回入ったのは、定食が評判の昔ながらの食堂でした。
席へつくと、隣のテーブルでは常連らしきお客様と店主が楽しそうに話をしています。
「来年4月から、食料品の消費税が1%になる予定らしいね。
弁当やデリバリーにお客さんが流れちゃうんじゃないの?
どうするの?」
店主は笑いながら答えました。
「そうねぇ、そういうこともあるかしらね。
だったら、あなた2倍来てよ。
2人前食べてもいいわよ!」
店内が思わず笑いに包まれました。
ユーモアのある返しに私も思わず笑ってしまいましたが、その一方で、この話は決して笑い話だけでは済まされない問題だと感じたのです。
実は最近、同じような質問を受けることが増えています。
「来年4月から実施予定の食料品の消費税1%は飲食店にはどんな影響がありますか?」
現時点で想定できることはいくつかありますが、まず考えられるのは、テイクアウトや弁当、デリバリーとの価格差が、これまで以上に意識されることです。
「今日は持ち帰りでいいかな」と選択されるお客様が増える可能性は十分考えられます。
だからといって、「店内飲食も安くしよう」と価格だけで対抗するのは危険です。
ただでさえ、原材料費、人件費、光熱費は高騰しています。
利益を削ってまで価格競争に入れば、最後に苦しくなるのは自分たちです。
では、何をすればいいのでしょうか。
私は、「来店する理由」をもっと強くすることだと思っています。
出来たての料理を味わえること。
スタッフとの何気ない会話。
居心地のいい空間。目の前で焼ける音や香り。
「お待たせしました!」という元気な声。
これらは、弁当にもデリバリーにも届けることのできない価値です。
私はこれを「来店価値」と呼んでいます。
思い返せば、この『現場の眼』でも何度も書いてきました。
元気な挨拶一つで店の印象は変わること。
見送りの一言がお客様の記憶に残ること。
「いつもありがとうございます」の一言が、お客様を常連へ変えていくこと。
こうした積み重ねこそが、飲食店だけが持つ最大の武器なのです。
消費税率がどう変わろうとも、「この店で食べたい」と思っていただけるお店は、お客様に選ばれ続けます。
逆に、「食べるだけなら家でいい」と思われた瞬間、価格差は大きな壁になります。
これからの飲食店は、「何を売るか」だけでなく、「なぜ、この店に来るのか」という理由を磨く時代です。
価格で勝負する時代から、価値で選ばれる時代へ。
まさに、その転換点に私たちは立っているのではないでしょうか。
厳しい暑さはまだまだ続きます。
どうか体調には十分気を付けながら、お客様に「今日も来てよかった」と思っていただける店づくりを、一緒に続けていきましょう。
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