2025年9月10日
その255 お客様の食事環境をチェックする姿勢が繁盛の鍵

「会社の近くで帰りがけに夕食を食べてきたんだけど、コンビニでおにぎりでも買って帰った方がマシだったな」
「えぇ!?
それって相当よ。
あなた、外食に関しては私よりも甘い評価するくせに」
と、奥神様に言われる始末。
いや、決して味が悪かったわけではないんです。
料理は普通。
でも、とても居心地が悪かったのです。
どうだったかというと・・・。
【お客様の食事環境をチェックする姿勢が繁盛の鍵】
その日の夜、仕事が押して夕食の時間がすっかり遅くなり、帰り道にふと目に入った大型飲食店へ入ってみました。
よく見かける大手チェーンの店です。
入って早々、妙な不快感がじわじわと広がってきました。
まず入口に立っても誰も気づかない。
レジ横ではスタッフが二人、楽しそうにおしゃべり中。
仕方なく勝手に空いていた席に腰を下ろしました。
やっと気づいて「ご注文どうぞ」とやってきたのはいいけれど、目線はどこか上の空。
「いらっしゃいませ」の一言もなく、まるで“作業”として対応されている感じでした。
さらに問題は「音」。
厨房からは金属同士がぶつかるガチャガチャ、カンカンという食器の音。
まるで工場の中にいるような音が。
さらには、ガシャーン!と調理器具のバットを落としたような、店内に響き渡る大音量まで聞こえてきました。
ホールスタッフが「失礼しましたぁ!」と大声で謝るものの、それがまたマニュアル調で心がこもっていない。
極めつけはスタッフ同士の私語。
オーダーを取り終わると、また楽しそうに笑いながら会話を続けているのです。
その声が客席までクリアに届き、料理を味わうどころではありません。
お客様にとって食事は「ひとときの楽しみ」であるはず。
なのに、その大切な時間を邪魔されると、料理の美味しさは一気に霞んでしまいます。
結局、私は料理をさっと平らげ、黙って会計し店を後にしました。
帰り道、「ああ、コンビニの弁当を買って帰ればよかった」とつぶやいたのは、冗談ではなく本気でした。
さて、ここで大事なことを一つ。
飲食店は「料理を提供する場所」ですが、同時に「体験を提供する場」でもあります。
料理の味はもちろん大切ですが、それを支えるのは五感すべてです。
• 視覚:盛り付けや店内の清潔感
• 聴覚:音楽やスタッフの声のトーン、厨房の物音
• 嗅覚:香ばしい匂いと、清潔感のある空気
• 触覚:椅子の座り心地やテーブルの手触り
• そして味覚:料理そのものの美味しさ
この「五感のバランス」が揃って初めて、「また来たい」という満足体験になります。
しかし現場にいると、どうしても「慣れ」が生まれます。
スタッフにとっては毎日の音や会話も日常の一部。
でもお客様にとっては、その一度の体験がすべてです。
ここを忘れてしまうことが、繁盛の妨げになるのです。
だからこそ、店主や責任者は定期的に「お客様の目線」で店を体験すべきです。
客席に座って座った目線で店内を見回し、実際に注文してみる。
厨房の音はどう聞こえるか、スタッフの会話はどう響くか、照明や空調は快適か。
現場をただ“管理する”のではなく、“お客様として体験する”ことが、最も正確なチェック方法です。
ある老舗の店主は、毎日、営業中に必ず10分間だけ客席に座り、店を眺める習慣を続けています。
「厨房の音も、スタッフの顔つきも、客席から見ると全然違う」と言うのです。
その習慣が、長年の繁盛を支えている秘訣なのだと思います。
お客様の食事環境を整えることは、料理の味を何倍にも引き立てるスパイスです。
逆にそれを軽視すれば、どんなに腕のいい料理人の商品でも「また来たい」とは思ってもらえません。
そう強く感じた夜でありました。
ではまた。
石田義昭『飲食店繁盛ダネ!』
“繁盛仕掛け人”石田義昭が飲食店開店の秘訣から売上増進の策および、日本各地の販売促進事例をわかりやすく解説、紹介します。
井上奈々子の『食の豆々知識』
飲食店における重要なメニューの考え方、作成方法、そして商品開発の極意など、繁盛につながるヒントを余すところなく紹介します。
KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』
実践コンサルタントが各地を回りまさに“事件は現場で起きている”を心に目を光らせ、見つけた問題点を鋭く指摘、改善を容赦なく進言、普段の行動の様子を紹介します。
飲食店経営のあらゆる
お悩み、相談、ご質問をお受けします