2025年12月6日
その257 食材高騰対策を安易に考えてはいけない

「ねえ、世の中、物価高で大変なのに、うちのご飯、全然変わらないけど大丈夫なの?」
「節約はしてるわよ。
なるべく安く買うようにしてるけど、悪いものは買わないわ。」
「へぇ、努力してるのね。」
「そうよ、あなたが健康でないと、我が家の収入がね。
まだまだ頑張ってもらわないと」
「そうね、働かないとね…」と、まるでプレッシャーをかけられた気分で食卓を囲んだ夕食でした。
けれど、確かに今、飲食業界にとっても「物価高・食材高騰・人件費上昇」は大きな課題。
家庭も店も、“質を落とさずにどう乗り越えるか”が問われています。
【食材高騰対策を安易に考えてはいけない】
先日、顧問先に伺う前、少し時間があったので、駅前のカフェに入りました。
昼食がまだだったので「生姜焼きランチ1350円」を注文。
正直、「ちょっと高くなったなぁ」と感じつつも、「まぁ、食材が上がってるから仕方ない」と納得していたのです。
ところが、出てきた料理を見て、もやっとしました。
まずご飯。
見た目でわかるほど安い米で、しかも黄色く劣化が進んでいる。
スープはワカメが二切れだけ、まるで「寂しい海の中」。
お盆には紅茶まで一緒に載ってきましたが、砂糖もミルクもレモンもない。
飲む前に紅茶がぬるくなる配慮のなさに、「うーん、これは…」と心の中でため息です。
それでも仕事前に気持ちを乱したくなかったので、黙って食べ始めました。
ところが、生姜焼きを口に入れて驚きました。
中の玉ねぎと肉が冷たいのです。
どうやら作り置きをレンジで温めた様子。
つまり、効率重視の“レンチン調理”だったのでしょう。
ここで私は、あらためて考えさせられました。
食材高騰、人件費上昇…、たしかに経営は厳しい。
けれど、値上げをしながら品質を下げてしまうのは本末転倒です。
お客様は「高くても納得のいく価値」にはお金を払います。
しかし「高くなったうえに品質が落ちた」と感じた瞬間、その店への信頼は一気に崩れます。
コストダウンは悪ではありません。
問題は、“安易にやりすぎる”こと。
・安い食材に切り替える
・手間を省くために作り置きを増やす
・提供スピードを優先して調理工程を簡略化する
こうした対策は一時的なコスト削減になりますが、同時に“お客様の体験価値”を削ってしまうリスクも高いのです。
例えば、ある顧問先の洋食店では、仕入れ価格が上がった際に、メニューの中身を見直しました。
単純に食材を安くするのではなく、「使う量を少し減らす代わりに、盛り付けや器で高級感を出す」「小鉢やスープを季節の食材に替えて満足感を保つ」といった工夫をしました。
その結果、お客様からの評価は落ちるどころか、「最近おしゃれになったね」と好評です。
つまり、食材高騰への対応は“安くする”ではなく、“工夫する”ことが鍵です。
安易に品質を落とせば、店の信用は確実に下がります。
しかし、創意と誠意を込めた工夫は、お客様に伝わる。たとえ価格が上がっても、納得してもらえるのです。
私がそのカフェで感じた「もやもや」は、単に味や温度の問題ではなく、「お客様をどう感じさせるか」を考えていないことへの残念さでした。
効率やコストの前に、“お客様の体験”を守る視点があるかどうか。そこが繁盛店と苦戦店を分ける境界線だと感じます。
【食材高騰対策を安易に考えてはいけない】
それは、単なる経営の話ではなく、“お客様の信頼を守る姿勢”そのものなのです。
ではまた。
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