2025年12月10日
その258 予期せぬサービスが、また来たいを生む

「ねえ、あなた、今年はどこのレストランに行くか、決めてくれてるのかしら?」
12月は奥神様のお誕生日。
毎年、外食するのがわが家の恒例行事です。
「あ、ちょうど決めようと思っていたところだよ。」
「よく言うわ、忘れていたくせに。
ダイジョブよ、私がもう予約したから。」
「へっ、どこ?」
「去年と同じお店よ。
あそこ、サービスよかったでしょう」
――と、相変わらず主導権は奥神様にあるわけですが……。
【予期せぬサービスが感動を生む】
思い返してみると、確かに昨年のそのレストランでの出来事は印象的でした。
食事の途中、こちらが誕生日の話を少ししただけなのに、
スタッフが気を利かせてくれて、
最後のデザートに「Happy Birthday」の文字と小さな花火が添えられていました。
さらに帰り際には、プチギフトまで。
何が入っていたのかは二人とも忘れてしまったのですが(笑)、
その“予期せぬ気遣い”だけは、温かい記憶として残っています。
人は、思いがけないサービスに心を動かされるもの。
そしてそれが“その店の印象”を決定づけ、
翌年の予約につながる。
まさに今回の奥神様の行動が、その証拠です。
さて、私が最近訪れたある居酒屋でも、
似たような体験をしました。
仕事帰りで少し疲れた夜、ふらっと寄った店で、
注文した料理が少し遅れていたのですが、
スタッフが「お待たせしてすみません」と、
小皿のつまみをサービスしてくれたのです。
たったそれだけのことですが、
疲れた心がふっと軽くなりました。
その瞬間、この店の評価はぐっと上がりました。
逆に、思いがけない“残念な体験”もあります
たまたま入ったカフェで、料理は普通。
しかし、店員は無表情でお盆を置き、
注文を間違えても謝らず、淡々と作業をこなしている。
決して悪意はないのでしょう。
ですが、そこに“人のぬくもり”がない。
料理の印象よりも先に、
その冷たさだけが強く残ってしまうのです。
飲食店が提供するのは「料理」だけではありません。
料理というハードに、
“人”というソフトが加わって、
初めて記憶に残る体験になります。
そしてお客様が心を動かされるのは、
「期待していた以上の瞬間」があったときです。
もちろん、
「なんでもかんでもサービスすればいい」
という話ではありません。
重要なのは、
お客様の状況を察し、ほんの少しだけ心を添えること。
・誕生日の会話が聞こえたら、簡単なメッセージプレートを添える
・料理が遅れたら、ひと言と小さな小皿を
・寒そうな方にはブランケットを差し出す
・雨の日にタオルを置く
こうした小さな気遣いが、
「予期せぬ感動」につながります。
ある顧問店の店長が、こんなことを言っていました。
「特別なコストをかけなくても、
お客様の表情を見る習慣をつけるだけで、
サービスの質は大きく変わりますよね」
その店は実際にリピーター率が高く、
お客様の“長居率”も驚くほど長い。
つまり、
心地よさが、長く滞在してもらえる力になっているのです。
奥神様が
「またあの店に行きたい」と言った理由は、
料理の味を忘れていても、
“心が動いた瞬間”だけは覚えているからでしょう。
12月は、お客様が一年で一番
「温かさ」を求める季節。
ちょっとした気遣いが、
忘れられない一年の締めくくりになるかもしれません。
それは、単なる経営の話ではなく、
“お客様の信頼を守る姿勢”そのものなのです。
ではまた。
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