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コラム
KAZU石田の『飲食店現場の眼-小さな気づき-』
2026年10月19日
Vol.179 回転寿司はもう回らない?大手チェーンのDX化で見えた、小さな飲食店の生き残り戦略

秋の気配が色濃くなってきました。
季節の変わり目ですので、皆さまもどうぞお気をつけください。
さて今回は、顧問先を訪問したときのお話です。
打合せを始めようとしたところ、社長が、「まだ食事してないんですよ。
一緒にどこかで食べながら打合せでいいですか?」ということで、社長の車で向かったのは郊外の大型回転寿司チェーンでした。
ランチタイムが終わった店内はまばらなお客様。
ところが、入口の扉を開けても「いらっしゃいませ!」の声も、従業員の姿もありません。
「ん?」と思っていると、そこには受付用のディスプレイが2台。
社長が画面を見ながら、人数、カウンターかテーブルか…とポンポン操作すると、番号札が発券され、「番号のテーブルへお進みください」とアナウンスが。
二人で顔を見合わせながら席へ向かいました。
そして席について、さらに驚きました。
「寿司が……流れていない」
「ランチピークが終わったから、流していないんだな」と私は思いました。
ところが、違いました。
ベルトの前にはデジタルサイネージがあり、寿司の写真が次々と表示されています。
触ってみると「注文」の文字が。
「あらあ、流れているのを取るんじゃなくて、ここから注文するのか」
つまり、ベルトコンベアは、寿司をグルグル回すためのものではなく、注文された商品をお客様の席までピンポイントで運ぶ“配送システム”になっていたのです。
しばらく回転寿司から遠ざかっていた私は、コンサルタントとして少々恥ずかしくなりました(笑)。
人手不足、最低賃金の上昇、食材価格の高騰、そして飲食店を取り巻くさまざまなリスク。
そうした環境の中で、大手チェーンはDX化をどんどん進めています。
注文はタッチパネル。
商品は自動的に席へ。
必要な時だけ呼出ボタン。
そして最後の会計も無人レジ。
私たちが2時間ほど滞在している間に、実際に言葉を交わした従業員は一人もいませんでした。
見かけたのも、バッシングやテーブル整理をするパートさん一人だけ。
それでも、何も困りません。
むしろ、たっぷり食べて、たっぷり打合せができて、満足して店を出ました。
「いやあ、大手はこれでいいよね」
帰りの車の中で社長が言いました。
「どんどん効率化してくれたらいい。
完全に我々とは違う、はっきりしたターゲットの飲食店になってくれる。
そうすれば、逆に我々の良さが大きな利点になるんじゃないですか」と。
もちろん、大手チェーンの効率化は脅威です。
大量仕入れによる価格競争力、商品開発力、広告力、DXへの投資、人材教育の仕組み…。
小さな店が簡単に真似できるものではありません。
しかし、大手が効率化すればするほど、反対側にある価値もはっきりしてきます。
例えば、常連のお客様の顔を見て、「いつもありがとうございます」と声を掛ける。
「最近お見えにならなかったですね。お元気でしたか?」と気遣う。
「味はいかがですか?」と声を掛ける。
お子さんには取り皿やスプーンをこちらから用意する。
お客様との会話を楽しむ。
そして帰り際には、「ありがとうございました。またお待ちしています」と、その人の目を見て送り出す。
これは、タッチパネルではできません。
AIや自動レジがどれほど進化しても、簡単には置き換えられない部分です。
もちろん、すべての人が「人との会話」を求めているわけではありません。
静かに、自分のペースで、誰にも邪魔されず食事をしたいお客様もいます。
だからこそ、今回の大型チェーンのような「便利・早い・気楽」という価値が支持されるのでしょう。
ならば私たちは、同じ土俵で戦わなくてもいい。
大手が「人を介さない便利さ」を追求するなら、私たちは「人がいるからこその価値」を磨けばいい。
料理の味だけではありません。
「この店に来るとホッとする」
「この人に会うと元気になる」
「自分のことを分かってくれている」
「ちょっとしたわがままも聞いてくれる」
そんな、人と人とのつながりも立派な商品です。
大手チェーンがどんどん進化してくれるからこそ、私たちは自分たちにしかできないことを、もっと明確にできるのかもしれません。
効率化できるところは効率化する。
その一方で、効率化してはいけない「人の温かさ」には、思い切り手間をかける。
これからの小さな飲食店にとって、そんな“二極化”がますます重要になるのではないでしょうか。
「大手が怖い」と思う前に、「大手にはできないことは何だろう?」と考えてみる。
そこに、これからの繁盛店づくりのヒントがあるように思います。
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